※本記事の内容は2026年8月時点の制度に基づいています。
1. 興行ビザ(在留資格「興行」)とは?
興行ビザ(在留資格「興行」)は、外国人が演劇・演芸・演奏・スポーツなどの興行や芸能活動を行うための在留資格です。該当する例としては、俳優、歌手、ダンサー、プロスポーツ選手などが挙げられます。
海外からアーティストやスポーツ選手を招いてコンサート・舞台・試合などを行う場合、招く側(招へい機関・主催者)と来日する本人の双方に関わる手続きです。観光目的の短期滞在ビザでは、報酬を伴う興行活動は認められていません。無許可のまま活動すると、演者本人だけでなく、招いた主催者・招へい機関側も責任を問われる可能性があるため、双方にとって避けて通れない手続きです。
手続きを進めるのは、来日する本人だけではありません。招へい機関(主催者・プロモーター・興行会社など)の側にも、契約内容や会場、報酬額といった条件を事前に整理し、必要な書類を揃える役割があります。むしろ実務上は、招へい機関側の準備がどこまで整っているかが、審査のスムーズさを大きく左右します。
想定される場面はさまざまです。海外アーティストが単独でコンサートを行うケース、音楽フェスティバルに海外アーティストが出演するケース、海外のプロスポーツ選手が国内大会に出場するケース、広告やミュージックビデオの撮影のために来日するケースなど、興行の形態によって、区分(1号・2号・3号)のどこに当てはまるかが変わってきます。区分ごとの違いは次のセクションで解説します。
2. 対象となる活動・職種は?
興行ビザの対象は、俳優・歌手・ダンサー・モデル・スポーツ選手など多岐にわたります。代表的な例は次のとおりです。
俳優
歌手
ダンサー
モデル
スポーツ選手
これら以外にも、公衆に見せる・聞かせることを目的とした活動であれば対象になり得ます。実際に該当するかどうかは活動内容によって判断が分かれるため、個別の確認が必要です。
3. 興行ビザの区分:1号・2号・3号
興行ビザは、活動の内容や興行の規模、主催者の種類などによって、大きく1号・2号・3号の3つに区分されています。なかでも1号はさらに「イ・ロ・ハ」の3つの類型に分かれており、実務上もっとも判断が細かくなる区分です。
区分 | 対象となる活動のイメージ |
|---|---|
1号(イ・ロ・ハ) | 演劇・演芸・歌謡・舞踊・演奏の興行に係る活動 |
2号 | 演劇等以外の興行(スポーツなど) |
3号 | その他の芸能活動(商品・事業の宣伝、放送番組・映画製作、商業用写真撮影、商業用レコード等の録音録画) |
1号はなぜイ・ロ・ハの3つに分かれているのか
1号は「演劇・演芸・歌謡・舞踊・演奏の興行」という同じジャンルの中で、興行の性質によって3つの入り口が用意されている、と捉えると理解しやすくなります。
イ: 本邦の公私の機関と締結する契約に基づいて行われる、演劇、演芸、歌謡、舞踊又は演奏の興行に係る活動を想定しています。ただし場所の条件があり、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)が定める一定の営業施設(キャバレー・接待を伴うクラブ等)は対象外です。
ロ: 「公益性が高い」か「短期間・高単価」のどちらかで基準をクリアする入り口です。次の5パターンのいずれかに当てはまるかどうかの確認が必要です。
国・地方公共団体・特殊法人が主催する興行、または学校での興行
文化交流を目的に、国・地方公共団体・独立行政法人の援助を受けた機関が主催するもの
外国の文化を紹介する目的で観光客を誘致する、敷地10万平方メートル以上の施設(テーマパーク等を想定した規定と考えられます)で常時行われるもの
客席で飲食物を有償提供せず接待も行わない施設(非営利運営、または客席100人以上)で行われるもの
報酬額が1日50万円以上で、30日を超えない期間のもの
国際交流基金が招へいする海外オーケストラの公演、大規模フェスティバルへの出演、高額ギャラでの単発ライブなどが想定される例です。「公益性の高い興行」と「一定の規模・報酬がある興行」の両方をこの区分で受け止める設計になっている、と読み解けます。
なお、報酬要件の「1日50万円」は、団体で出演する場合はメンバー個人ではなく団体が受け取る総額で判定される点に注意が必要です。
ハ: イにもロにも当てはまらない、いわば受け皿の区分です。数値基準がないぶん、「なぜこの興行が興行ビザに値するか」を個別に説明・立証する必要があり、実務上もっとも準備の負担が大きい区分とされています。たとえば、小規模な会場での公演で報酬が50万円未満、かつ公的機関の主催でもない、といった中間的なケースがここに当てはまりやすくなります。
2号(スポーツなど)
2号は演劇等以外の興行、つまりスポーツの試合や格闘技イベントなどを想定した区分です。1号のような具体的な数値基準は法務省の案内上明記されておらず、個別の興行の実態(契約内容、主催者、大会の性質など)に応じて判断される部分が大きいと考えられます。海外プロ選手を招いての国内大会出場や、格闘技イベントへの参戦などが該当します。
3号(その他の芸能活動)
3号は「興行」そのものではなく、次の4種類の芸能活動を対象にした区分です。
商品や事業の宣伝に関する活動(広告出演など)
放送番組(有線放送含む)や映画の製作に関する活動
商業用写真の撮影
商業用のレコード・ビデオ等への録音・録画
海外モデルの広告撮影、海外俳優の映画出演、海外ミュージシャンのミュージックビデオ撮影・レコーディングといった、観客を前にした「興行」ではなく制作・撮影が中心の活動が3号に分類される、とイメージすると整理しやすくなります。2号と同様、1号のような数値基準は明記されていません。
(出典: 法務省出入国在留管理庁「在留資格『興行』」https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/entertainer.html および同ページ掲載の基準1号イ・ロ・ハ/2号/3号の各解説ページ)
4. 在留期間の目安
在留期間は、3年、1年、6月、3月、30日のいずれかとなります。活動内容や契約期間などに応じて決定されます。
5. 短期滞在ビザ・芸術ビザとの違いは?
短期滞在ビザ・芸術ビザは、興行ビザとは目的が異なる在留資格です。
短期滞在ビザ: 報酬を伴う興行活動は認められません。
芸術ビザ: 学術上または芸術上の活動を目的とする在留資格で、興行(公演等の営利目的の活動)とは区別されます。
6. まとめ
興行ビザは、区分によって求められる要件が大きく異なる制度です。特に1号ハに該当するケースは個別判断になりやすく、要件を満たすかどうかの見極めに専門知識が必要になります。
審査には一定の準備期間がかかるため、「イベントの告知は決まったが、ビザの手続きはこれから」という状態では時間的に余裕がなくなりがちです。公演や試合、撮影などのスケジュールが固まった段階で、早めに準備を始めることをおすすめします。
監修: ナユタ行政書士事務所 高木泰子
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